「あおむしに足を増やす」私が見てきた多くのDX事例がこれで、一見成功しているように見えた失敗であり、多くの企業がこの枠を超えません。
これに対する私が考えるDXの成功イメージは「あおむしが蝶々になる」です。9割型のDX事例ではあおむしの足を増やしたり、身体を軽くして、スピードを上げるに留まった発想に留まり、既存の機構を壊せぬままにおります。その骨格・機構に著しい変態が起こり、行動方法が激変する位の変化を遂げねば、VUCAの変化が加速する時代には付いていけない為、成功とは言い難いです。
この「あおむしが蝶々になる」というプロセスは、正確には「あおむし」が「さなぎ」になり、固い外皮に覆われる中で、その体内成分を一度溶かし、羽ばたく為の再編成を行った後に「蝶々」への変態を終えます。
この様を抽象化すると「古い体組成を壊して、その成分を用いて別の仕組みを創る」と言えますが、歯の治療の「ダメになった歯を削り取り、そこに別のもので埋める」というプロセスと比較すると、その前半部分は近い側面があるのかなと思いました。
今回は、DXを成功させる為のプロセスと歯の治療のプロセスの類似性を鑑みて、DXを成功させる為にはどうすべきかについての考察を共有します。
こんな方におすすめ
- DXを成功させたい経営者の方
目次
DXが必要度合いが高いのは大企業
まず質問になりますが、あなたはDXの必要度合いが高い会社はどんな会社だと思いますか?
答えを言ってしまうと、変化の流れに付いていけなくて経営判断が遅く、多様性の低いこれまでの時代に繁栄してきた会社です。
もっというと安定したサービスを提供する為に、社内にがんじがらめの様々なルール・仕組みを造って成長を遂げた大企業だと言えます。なので、大企業であるほどDXが必要だとも言えます。
DXを成功させるには経営者の正しい認知が必要
その大企業にとってDXを成功させる為の大前提となるのは、経営者がDXの必要性とDXで何をすべきかを理解していることです。
何故かと言うと、大企業は原則、厳格なピラミッドで権力が上部に集中しており、経営者が鶴の一声を発さないまま、いくら下々の存在が声を上げても変われない体質である為です。まずは経営者が大きな声でDXをすると発しないとDXが成り立たないのです。
そして、これが一番難しいポイントなのですが、経営者がDXとは「これまでの自分達の成功を押し上げた仕組み・ルールを壊す行為」と認識する必要があります。
そもそも、DXが求められる背景である時代の変化に対応する為には、安定の時代にガバナンスを機能させる為に構築していたヒエラルキーや遅すぎるワークフローは役に立たない為、ここを壊す必要があるのです。
DXが求められる大企業でやっかいな点は、経営者だけでなくその構成員も会社の方向性を変える為の著しい変化についていけない身体になっており、その仕組み以外のやり方はないと習慣としてしみ込んでしまっている点です。
DXが歯の治療に似ているポイント
この点を打ち壊せるのは、決定権のある上位層なので、とにかくトップダウンでがしがしと既存の遅い仕組みを壊していかないといけません。
ここで冒頭の歯医者の下りに戻るのですが、その自前の仕組みを壊していく際にどこに手を付ければよいか、どのように壊せばよいかを外部の専門家に判断をゆだねる様は歯を嫌々削る虫歯治療に似ていると思うわけです。
歯の治療というと「固い歯を削るツールやその痛みを抑える為の麻酔、どこをどのドリルでどういった順に削るか、そして何を詰めるかの知識」を保持していると歯医者じゃないと難しいように、DXに関しても「どのようなツールを使ってどこを壊して、代わりに何を埋めるか」を把握している治療者が必要と言えるでしょう。
しかし、残念なことにこのDXの処置を正しく行える治療者はほとんどおりません。それは、DXが導くであろう先の時代を経験したものが居ない為です。
これまでの安定の時代においては経営判断を仰ぐ場合は、他の事例を知る者から学べばよかったのですが、今はその他の事例が無いのと、あったとしても一見うまくいったように見えるこれから沈没するであろう泥船事例ばかりだからです。
DXどう治療すべきか?
では参考にすべきものが無いかというと、そういうわけでもありません。DXを必要とする会社は、DXが不要な会社を参考にすれば良いのです。
それが何かというと、スタートアップのように比較的最近設立している企業です。厳密にいうと、ただのスタートアップではなく、時代の変化に順応して業績を著しく伸ばしているティールと呼ばれる組織です。
ティール組織は名前が先行していますが、時代の流れと整合するように、その組織は多様です。ただし、根底にはシンプルなルールチェンジがあり、大企業が基本的に人を信じずにロボットのように扱うのに対して、ティールは人を信じます。
全てトップダウンで動く組織ではなく、ティール組織は生命体のように自律的に様々なことを末端で決定して行動する為、変化に強いという特徴があります。
参考
詳しくはこちらで整理しているので、気になる方は参考にしてみてください。
明らかに治療すべきポイント
そうは言ってもティール組織が何かわからないから、何をすれば良いかわからない!という方も多々いらっしゃると思います。
仰る通りでティール組織自身を正しく認知している人もかなり少ないので、そこは個別に私にアドバイスを聞いてくれって感じなんですが、きちんと世の中のことを見据えていれば、少なくともDXでここは治すべきという点は一目瞭然だったりします。それはPDCAを基軸とするマネージメントです。
変化の加速する時代に計画の有効度は著しく減衰しております。計画してもすぐ先で計画がとん挫してしまうので、PDCAでの管理が意味を為さなくなるのです。
虫歯=PDCAだったとして、代わりの詰め物は何かというとOODAと呼ばれる変化に強いマネージメントです。
無価値化している計画をとっぱらって、周囲のデータを観察し、方向づけして行動していくというスタイルです。
このOODAを上手く機能させるためには、ニワトリが先か卵が先かの話ですが、判断材料となる様々なデータをデジタル化しておく必要があります。ゴールのイメージは、AmazonをはじめとするECサイトのリコメンドエンジンのようなもので、データを元にオススメの施策をリコメンドしてもらうようにすることです。
ここまで言うとデータドリブン経営で、DXっぽいよねって思われる方が多いのですが、PDCAを壊すこととセットでデータドリブン経営を理解出来ている人が過小なのがこの記事を書いている現時点での私の感想です。
まとめ
まとめます。
- DXがとりわけ必要なのはルールや規則で雁字搦めな大企業
- 大企業をDXするには経営層の鶴の一声が必要
- 経営者は自身の成功を支えた仕組みを壊す覚悟が必要
- 自己破壊を自身で為すのは難しい
- 仕組みを壊して代替する際は、そもそもDXが不要なティール組織を参考にするとよい
- MUSTでやらないといけないのはマネージメントスタイルの変更(PDCA→OODA)
- マネージメントスタイルの変更には周辺事象のデジタル化、集積、分析を行える環境が必要
他にもDX関連の考察や失敗事例を紹介しておりますので、気になった方は観ていってください!
ご閲覧ありがとうございました。
ではでは(^^)/